2012年11月11日日曜日

ジャズドミュニュスターズ@新宿ピットイン.11月6日(火).レポートと雑記

本のアルトサックス。が、それぞれ絡み合いながら無視しあいながら嬌声をあげる。カジュアルシャツにハットの菊地成孔、フォーマルスーツ・黒タイ・黒縁メガネの大谷能生。全く似ていない双子のような二人の奏者と、機材・楽譜の溢れた机上、さらに後ろにグランドピアノを擁した、新宿ピットインのステージから流れる耽美なサックスを受けて、わたしたちは悩んでいた。踊るべきか、否か。今から聴くものはいったい何なのか。欲望が多様化・細分化され、ユニクロがドンキホーテがセブンイレブンが、ほぼすべてのニーズに応えてくれる今の日本で、不安。少しの恐れ。そしてときめきをもって、未知なる音楽を聴くことが出来るなんて、わたしたちはどう反応していいか分からなかった。だって、まだそれについての教科書はアマゾンで売ってないんだもん。




2012年11月6日菊地成孔3デイズ2日目

ジャズドミュニュスターズ・デビュー公演@新宿ピットイン




ピットインの写真がなかっ
たので(笑)歌舞伎町の
スパのトイレの写真。
 「たぶん、踊ってたほうが楽ですよ。」これ、ヒップホップかどうかもわかんないし。と冒頭で微笑んだ二人、再構成されたDCPRGの[Catch 22](兎眠りおんa.k.a.初音ミクのパートがとにかく最高。再録なのか、その場で元音源にエフェクトをかけていたのか、素人にはちょっと分かりかねたものの、とにかくCD版よりケイオス! 高度1万メートルからカタコンベまでをカヴァーするぐらんぐらん具合。)でわたしたちをいったんは欺き、「ああ、この路線ね。じゃあ全然ヒップホップじゃん。踊れるじゃん。」とほっと緊張を解かせたそのあと、シームレスに始まった「朗読」――ほんとうに、片手に小説を持って。――が、再び同じ苦悩に突き落とす。お、踊って、いいの? これは、な、な、なんなの? とりあえず、思うしかない。「大谷能生の声、サイコー。」

 「ブルックリン第4地区で生まれた僕は……」と静かに語る美声に、二人の手元で切り貼りされる音の断片がかぶさって重層的にノイジー。でありつつ、やっぱりダンサブル。そして、たまに混じるスクラッチが、唯一われわれの知るヒップホップ。
 踊りたい、踊れない。身体が動いてしまうわたしと、凝視するしかないわたしと、フロアはぽつぽつと分かれ始める。(なかには、驚くべきことにあのわずかな明かりの下で読書を始める人がいた(笑)しかも参考書(笑)も~どれだけ賢くなるつもりなのか、この音の中。)DCPRGやペペ・トルメント・アスカラールとは違って徐々にアガっていく構成ではなく、難解さと踊りやすさが交互にやってくる展開は、ふだんならチャンプルー→興奮。なんだけど、今回はなぜか最後まで2分割された観客のままだった。(いや、答えは分かってる、勉強好きな人間ばっかりだったのだきっと(笑))でも、わたしの身体のなかは、熱い。



 ジャズ・ドミュニュスターズ。観念的・実験的というコロモをかぶったダンス・ミュージック・しかもヒップホップで全身を痺れさせた(まず背骨。次に頭部。あと足ね(笑))二人の男は、自分達も、観客も、音楽も、何もかもをこの晩ふたつに分けてしまうという「フロイト的」な力。「次はクラブでやりましょうね。そしたら踊れますからね(笑)」という菊地さんの言葉にそのさらなる快感を期待。
 



***



 う、なんか泣き出したくなるような1週間は、とても穏やかで、疲れていて、旧い友人と会って、投げ出したくって、愛読書はずっと『スペインの宇宙食』――しかも神経症発症直前の40日間の食べ物のことをとにかく詳細につづった日記の部分だけ。わっかりやっすいなあ、もう(笑)――を繰り返し繰り返し地下鉄のなかで読んで、ああ、もう、限界だったのでした。

 旧い友人たちと会ったのは、大手町でした。丸の内アオゾの横に走るガード下で楽しい鍋をいただく。モツだったかな。よく覚えていません。

 わたしは、本当に友人に恵まれていて、それだけは才能だなあと感じていますが、この晩も、素敵な思い出話と下世話な話がいい塩梅で焚き込まれており、安心してハイボール。ん? サワーだったかな。よく覚えていません。

 泣きたいときはたぶん映画が効くんですよね。映画じゃなくとも、とにかくストーリーのあるものじゃないといけない。勝手に涙が出てくるときはね、それは誰かに自分の話をしたほうがいい。でも、結局一回も泣いてないな、この秋は。

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